「著作物」の定義は、著作権法2条1項1号に定めがあります。
すなわち、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」とされています。
つまり、ある表現物が「著作物」であると認められるためには、次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。
- 「思想又は感情を創作的に表現したもの」
- 「文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
これら2つの要件を満たす表現物であれば、著作物として認められます。対象となり得る表現物は、かなり広いことになります。
しかし、どちらかの要件が一つでも欠ければ、「著作物」とは認められません。表現物であっても、著作物として認めら得るものは限られることになります。表現物であるからと言って、必ずしも「著作物」として認められるということではありません。
著作権法10条には、著作物の例示が定められています。しかし、例示であり、著作物がこれら例示列挙に限定されるものではありません。また、ここに例示されているもの、例えば「写真」であっても、著作権法2条1項1号の要件を満たす「写真」でなければ、「写真の著作物」とは認められません。「著作物」は、広いようで、限定されているので、注意が必要です。
ある表現物が著作物に該当するかどうかの判断は、著作権法2条1項1号等の文言のみから結論が導かれるものではなく、規範的な判断が必要になるので、結構難しい場合があります。著作権法の保護に値する表現物が「著作物」として認められるのですが、保護に値するかどうかは価値判断であり、価値判断であれば論者によって異なりうるのですが、かと言って論者ごとに勝手に判断をしてよいということではなく、過去の判例や学説等に照らし、規範的に判断する必要があるのです。それが結構難しくて、著作権法の専門家であっても、断定的な判断ができなかったり、専門家によって意見が異なることもあります。
典型的な著作物や、よく論点として取り上げられるような表現物の事案であれば、多くの教科書に説明がなされていることも多く、迷わずに済むかも知れません。しかし、非典型的な著作物で、論点とされることが少ない事案では、どの教科書にも、たいてい書かれていません。表現物の範囲が広いところ、教科書等で論じられているのは、ごく一部に過ぎません。
ある表現物が、「著作物」であるかどうかを判断したい場合、次のように検討するのがよいと思います。
(1)
まず、その表現物が、教科書や実務において、典型的に「著作物」として扱われているものかどうかを確かめます。
(2)
典型的な「著作物」でない場合、著作権法2条1項1号の要件を満たす表現物であるかどうか、教科書や過去の判例、実務における一般的な扱いを参考にしながら検討をするほかありません。
(3)
著作物に該当しそうだけれど確実でない場合、あるいは著作物に該当しないと判断される場合には、商標法や不正競争防止法等の他の法令や契約内容に定めることにより保護を受けることができないかどうかを検討することなります。