債権の消滅時効【民法改正(債権関係)】

概略

 債権は、次の場合に、時効によって消滅する(民法166条1項)。


(A)「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年間行使しないとき

又は

(B)「権利を行使することができる時」から10年間行使しないとき

 ただし、消滅時効の期間については例外を定める規定もあるので、注意が必要である。
 例えば、民法典だけでも、次のような例外規定がある。
(1)人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(民法167条)
(2)定期金債権の消滅時効(民法168条)
(3)判決で確定した権利の消滅時効(民法169条)
(4)不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法724条)
(5)人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法724条の2)

 なお、「債権又は所有権以外の財産権」については、
「権利を行使することができる時から20年間行使しないとき」、
時効によって消滅する(民法166条2項)。

条文

一般債権の消滅時効につき、民法166条1項を引用して置く(同条2項と3項は引用省略)。改正民法により実質的な変更が行われた。

(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。 

債権の消滅時効の期間は原則5年

 一般的な債権は、次の2つのいずれかの条件が一つでも成就されたときに、
時効によって消滅する。
 (A)又は(B)の各条件が満たされることを命題とすれば、両立的選言の関係にある。

(A)民法166条1項1号

 「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年間行使しないとき。

(B)民法166条1項2号

 「権利を行使することができる時」から10年間行使しないとき。

 上記(A)の「債権者が権利を行使することができることを知ったとき」を「主観的起算点」、
上記(B)の「権利を行使することができる時」を「客観的起算点」、
と言う(四宮和夫・能見善久著『民法総則(第9版)』弘文堂、2018年)。

 改正前民法では、「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」(改正前民法167条1項)、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」(改正前民法166条)と定められていた。改正前民法の一般債権には、主観的起算点の考え方はなかった。

短期消滅時効制度の廃止

 改正前民法で定められていた短期消滅時効制度(改正前民法170条〜174条)は、改正民法により廃止された。
 短期消滅時効制度の下では、債権の種類により、1年〜3年の短期により消滅時効が成立するものがあった。例えば、「運送賃に係る債権」については、1年の短期消滅時効が定められていた(改正前民法174条3号)。
 しかし、改正民法においては、これら短期消滅時効制度は廃止されたので、これら短期消滅時効の対象となる細かい債権の種類を覚える必要はなくなり、いずれも民法166条1項が適用されることになる。

 もっとも、当事者間の契約において、時効期間を短縮する特約は有効であると解されている。したがって、実務上、契約条項により、民法166条1項が定める消滅時効期間よりも短い場合があり得る。
 他方、時効期間を延長する特約は、一般的には無効であると解されている。

商事消滅時効制度の廃止

 
 商事消滅時効制度(改正前商法514条)も、改正民法の施行により廃止された。現在は廃止されているが、参考のために条文を引用する。

(商法514条、現在は廃止)

 商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。

一般債権の消滅時効について、基本的な考え方

 債権者としては、
確定期限の到来などにより、
「権利者が権利を行使することができること」を知るのが一般的であり通常なので、債権の消滅時効は5年であると心得ておいたほうがよい。
 5年が経過するのにうかうかしていると、債権が時効消滅してしまう可能性がある。

 契約書を締結する場合には、時効期間に関する特約についても確認すること。

 なお、不法行為による損害賠償請求の消滅時効期間は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」が基本である(民法724条1号。例外として民法724条2号や民法724条の2)。この3年間の消滅時効期間は、改正前民法と変わりがないが、一般債権の5年よりも短いので注意が必要である。
 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間については、機会を改めて整理したい。

債権法改正について【民法改正(債権関係)】

 コロナ禍の平成2年(2020年)4月1日、改正民法(債権関係)が施行された。

 いわゆる債権法改正である。
 この改正法とは、平成29年(2017年)5月26日に国会で成立した「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)である。同法律と同時に、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」(整備法)も成立した(平成29年法律第45号)。
 これらの法律は、一部の規定を除き、令和2年(2020年)4月1日に施行された。

 改正内容は多岐にわたり、広く一般市民に影響があるはずものであるが、施行当時はコロナ禍の状況に紛れてしまったのか、あまりニュースで見た記憶がない。約120年ぶりの民法大改正と言いながらも、コロナ禍の甚大な影響に比べれば、市民生活への影響が実感し難かったからであろう。

 しかし、債権法改正がニュースで話題にならなかったのは、コロナ禍ばかりが理由ではないだろう。大改正と言いながらも、実際の改正内容は、従前の判例や実務を踏襲したものが多いので、新しい法文により実際の生活がガラリと変わってしまうというようなものではない。これまでの日常生活において、法律用語を意識せずに暮らして来た人々にとっては、これからも民法が改正されたことを意識することはほとんどなさそうだ。

 それでも、改正前の民法の条文や法律用語を学んでしまった人達にとっては、新しい条文や法律用語、法解釈を整理して理解する必要がある。古い知識のままでは、新しい事態に廃止された法を適用して対応してしまうおそれがある。

 そこで、特に目につく改正点について、ざっくり整理して、記述を留めて置きたい。債権法改正の備忘録をつくりたい。

 ところで、余談だが、民法改正が行われた目的の一つは、「国民一般に分かりやすい民法」とすることであった。しかし、改正前民法の分かりにくさと、改正民法の分かりにくさは、全体としてあまり変わっていないと思う。部分的にみれば分かりやすくなったところもあるが、全体としてみれば、分かりやすくなったとは到底言い難い。
 そもそも、「国民一般に分かりやすい」法律とは何だろう?「国民一般」に分かりやすい法律など、これまで存在したことはあったのだろうか?「国民一般」とは、具体的に誰のことなのか?
 「国民一般に分かりやすい民法」にするという大義名分のもと、実際には何が行われたのだろう?

 

法人が破産すると、取締役や理事の地位はどうなるのか?

概略

株式会社の取締役や、一般社団法人の理事は、これらの法人が裁判所により破産開始決定を受けることにより、これら法人との委任契約が終了し、取締役や理事ではなくなる。
破産開始に伴い、破産管財人が就任し、これら法人の財産の管理処分権は、破産管財人に専属することとなる。つまり、取締役や理事であった者は、管理処分権を失い、会社の財産を処分する権限はない。
破産開始決定は、法人の解散事由ではあるが、清算手続は開始しない。(ただし、破産管財人が破産財団から放棄した財産について処分が必要となった場合には、清算手続きにより処分が進められることがある。)
なお、取締役や理事であった者は、破産手続開始によりその地位を終了することとなるが、破産手続において、破産管財人等に対し説明義務等を負担するものであるから、取締役や理事であったことの責任や役割を直ちに免れるというものではない。法的にも道義的にも、破産手続等に協力する必要がある。

民法の規定による委任契約の終了

民法653条は、「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。」を委任契約の終了事由として挙げている。
一般的に、株式会社と取締役の関係、一般社団法人と理事との関係、及び学校法人と理事と関係は、いずれも委任契約であると解されている。
したがって、これらの法人が破産したときには、上記民法653条により、委任契約は終了するので、取締役や理事ではなくなる。

法人財産に対する管理処分権限を失う

株式会社、一般社団法人、及び学校法人などの破産手続開始決定の際に、裁判所は、破産管財人を選任する(破産法31条1項)。裁判所が破産管財人を選任しないで破産手続開始決定を行う同時破産手続廃止という手続もあるが(破産法216条)、この同時破産手続廃止は個人の場合に用いられることが多く、法人の場合に用いられるのは極めて例外的である。
破産管財人が選任されると、破産管財人が法人財産につき管理処分権を専属して有する(破産法78条1項)したがって、従前の取締役や理事はこれら財産の管理処分権を失う。

破産により法人は解散となる

株式会社、一般社団法人、学校法人は、破産手続開始決定を受けると、解散となる(会社法471条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律202条、私立学校法50条)。解散しても、法人格は、破産手続が終了するまで存続し、それまでは消滅しない(破産法35条)。

株式会社や一般社団法人が破産した場合、清算手続きが開始されるのが原則であるが、破産の場合は例外であり、清算が開始しない(会社法475条、一般社団法人法206条)。
私立学校法の条文は、これら会社法等の規定と比べると、破産により清算は開始しないことが明確に書かれていない。しかし、破産管財人が選任されている破産手続において清算手続を行う必要がないことは株式会社と同様である。また、私立学校法50条の4において破産の場合には理事が清算人に就任しないと定められている。これらのことから、学校法人も破産より清算は開始しないと解されると思う。
なお、破産手続終了後などに、破産管財人が財団から放棄した財産について処分が必要となった場合には、そのために清算人の選任が必要となることがある。この場合、従前の取締役や理事が当然に清算人に選任されるというものではなく、裁判所に清算人の選任を申し立てて、清算人を選任してもらう。費用もかかる。

破産手続開始決定後の取締役や理事の役割

取締役や理事が、破産手続開始決定により委任契約が終了し、それらの地位を失うとしても、その役割を直ちに失うというものではない。
破産法40条は、破産者、破産者の代理人、破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人、前号に掲げる者に準ずる者、破産者の従業者の破産管財人に対する説明義務を定めている。過去にこれらの者であった者も、説明義務を負担している(破産法40条2項)。
したがって、取締役や理事が、破産によりその地位を失ったとしても、破産管財人に対する説明義務を負担しているなどの点において、破産手続に協力する義務がある。
法的にも道義的にも、破産手続に協力する必要がある。

以 上

養育費の家事調停調書に執行文付与は必要ない

養育費の支払給付を定めた家事調停調書に基づき、強制執行を行う場合には、執行文の付与は、必要ない。
したがって、この場合、執行文付与を受けずに、調停調書に基づき強制執行を申し立てることが可能である。

以上が結論であり、ここから先は説明である。

裁判所により強制執行を行う場合には、債務名義が必要である。
債務名義は、民事執行法22条に列挙されている。例えば、「確定判決」(同条1号)や「仮執行の宣言を付した判決」(同条2号)が債務名義として、ここに挙げられている。債務名義がなければ、強制執行を行うことはできない。

そして、一般的には、債務名義には、執行文の付与がなされていることが必要である(民事執行法26条)。

しかし、例外的に、執行文の付与が不要の場合がある。
この例外として、養育費や扶養料の支払給付を認めた家事調停調書に基づき強制執行を行う場合が、これに当たる。

この場合に執行文付与が不要なことについて、
法令の条文を読み解いていくことが、結構複雑で面倒である。
なので、次のとおり整理しておく。

 

まず、養育費の支払を求める家事調停の申立ては、家事事件手続法「別表第二」の3項「子の監護に関する処分」(民法766条2項及び3項等)に該当する。

次に、家事事件手続法268条1項は、「調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第39条の規定による審判)と同一の効力を有する。」とされている。
前述のとおり養育費の支払給付を定めた家事調停調書は、上記括弧書き内の「別表第二に掲げる事項」を定めたものであるから、上記268条1項により、「確定した第39条の規定による審判」と同一の効力を有することになる。

家事事件手続法39条は、「家庭裁判所は、この編に定めるところにより、別表第一及び別表第二に掲げる事項並びに同編に定める事項について、審判をする。」と定めている。
そして、その審判(裁判所が決定により下した判断)について、家事事件手続法75条は、「金銭の支払、物の引渡し、登記名義の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。」とされている。
ここに言う「執行力のある債務名義と同一の効力を有する」の解釈として、執行文は不要であると解されているものである。

したがって、養育費の給付条項の記載のある調停調書に基づき、
強制執行を行う場合には、執行文の付与は必要ないという結論に至る。

 

以下、補足である。

「別表第二」の事件は、養育費の給付を求める家事調停事件以外にも、「扶養の程度又は方法についての決定」、「婚姻費用の分担」や「財産の分与」に関する処分、並びに「遺産の分割」等々がある。

注意すべき点として、家事調停調書に記載された給付条項であっても、「別表第二」に該当しない事項については、執行文が必要となる。例えば、和解金、解決金、慰謝料のような場合である。

「執行力のある債務名義と同一の効力を有する」ものして、執行文が不要であると解されているものは、他の法律にもある。例えば、刑事訴訟法490条が「罰金、科料、没収、追徴、過料、没取、訴訟費用、費用賠償又は仮納付の裁判は、検察官の命令によってこれを執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する」などと定めている。但し、ある法律に、「執行力のある債務名義と同一の効力を有するもの」との文言が記載されていても、執行文付与の要否は、その法律ごとに解釈する必要がある。

土壌対策法の概略

概略の概略
大まかにいうと、土壌汚染のおそれがある一定の場合に(3条、4条、5条)、土地の所有者等には、「指定調査機関」(29条~43条)に委託して、「土壌汚染状況調査」(2条2項)を行う義務が生じる。法的な義務がない場合に、所有者等が自主的に調査を行う場合もある(14条)。
これらの「土壌汚染状況調査」等は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の調査を行うものである(2条2項参照)。「特定有害物質」とは、鉛、砒素など「土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるもの」として政令が定めるものである。
かかる調査の結果、汚染状態が環境省令で定める基準に適合しない場合には、都道府県知事は、要措置区域の指定(6条)か形質変更時届出区域(11条)の指定を行う。前者と後者とでは、上記環境省令基準に適合してない点において共通しているが、前者の「要措置区域」の指定は、さらに、汚染により「人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがある」ものとして政令で定める基準に該当することを要件とするものであるから、汚染の程度が重いと言える。汚染の除去等によって、指定事由を満たさなくなった場合には、都道府県知事により指定解除がなされる(要措置区域の解除につき6条4項、形質変更時届出区域の解除につき11条2項)。
要措置区域については、汚染の除去等の措置が必要となる(7条)。形質変更時届出区域については、土地の形質を変更しようとするときに届出義務が課され、変更の施工方法等が環境省令で定める基準に適合しているか否かが審査される。
また、要措置区域又は形質変更時要届出区域内の(汚染)土壌の搬出等に関する規制として、届出義務や、汚染土壌処理業者への処理の委託義務、管理票等について規制がなされ、汚染土壌の拡大防止が図られている。

沿革
土壌汚染対策法は、平成14年(2002年)に成立し、平成15年(2003年)2月15日に施行された。その後、幾たびか改正されている。この記事記載の直近の改正は、平成26年(2014年)改正法であり、平成27年(2015年)4月1日から同改正法が施行されている。

目的
土壌汚染対策法は、「土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置」及び「その汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること」等により、「土壌汚染対策の実施を図り」、「もって国民の健康を保護することを目的とする。」(法1条)
すなわち、国民の健康保護を究極の目的として、土壌汚染対策の実施として、(1)土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置と(2)その汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を行うものとされている。
これら2つの措置の具体的内容が、法2条以下において定められていると言える。
なお、上記「特定有害物質」とは何かについては、法2条に定義がある。

「特定有害物質」とは(定義)
「特定有害物質」とは、いわゆる有害物質のうち、法により「特定」されたものである。
法2条は、「特定有害物質」とは、「鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれのあるものとして政令で定めるものをいう。」と定義している。
政令として、土壌汚染対策法施行令が定められており、その1条で「特定有害物質」が具体的に列挙されている。

「土壌汚染状況調査」と自主調査
法が定める一定の場合(3条、4条及び5条)、特定有害物質による汚染の状況の調査を行う必要がある。これを「土壌汚染状況調査」という(2条2項)。
土壌汚染状況調査の方法は、環境省令により定められている。また、同調査は、「指定調査機関」が行うことになっている。
【3条】
使用が廃止された有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法2条2項の「特定施設」)に係る工場及び事業所の敷地で会った土地の所有者、管理者及び占有者(「所有者等」という。)が、一定の場合に、土壌汚染状況調査を行うものとされている。
【4条】
土地の掘削その他の土地の形質の変更であって、その対象となる土地の面積が環境省令で定める規模以上(3000㎡以上)のものをしようとする者は、環境省令で定めるところにより都道府県知事に届出のが原則である(4条1項)。その上で、都道府県知事は、「当該土地が特定有害物質によって汚染されているものとして環境省令で定める基準に該当すると認めるとき」に、環境省令で定めるところにより、当該土地の所有者等(所有者、管理者及び占有者)に対し、土壌汚染状況調査を命ずることができる。
【5条】
都道県知事は、土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準に該当する土地があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該土地の所有者等(所有者、管理者及び占有者)に対し、土壌汚染状況調査を命ずることができる。
【自主調査(14条)】
法が定める一定の場合(3条、4条、5条)のほかにも、土地の所有者等(所有者、管理者及び占有者)は、自主調査の結果、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が6条1項1号の環境省令で定める基準に適合しないと思料するときは、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、要措置区域(6条)又は形質変更時要届出区域(11条)の指定を申請できる。

要措置区域(6条)
要措置区域は、「その土地が特定有害物質によって汚染されており、当該汚染による人の健康に係る被害を防止するため当該汚染の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置(『汚染の除去等の措置』)を講ずる必要な区域として指定される。都道府県知事が、指定する。
具体的な要件としては、(1)「土壌汚染調査の結果、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないこと」、かつ(2)「土壌の特定有害物質による汚染により、人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準に該当すること。」の2つを満たす場合である。
上記(2)の要件により、「人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがある」区域であるから、汚染の程度が重大であると言える。
なお、都道府県知事は、「汚染の除去等の措置」により、要措置区域の事由がなくなったときは、指定解除を行う(但し、「形質変更時届出区域」(11条)の要件を満たすのであれば、同区域に指定されることになる。)。

形質変更時要届出区域(11条)
都道府県知事が指定する。指定されると、当該土地の形式を変更をしようとするときに届出をしなければならなくなる。
具体的な指定要件としては、(1)「土壌汚染調査の結果、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないこと」に該当する場合であって、(2)「土壌の特定有害物質による汚染により、人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準」に該当しない場合である。
要措置区域(6条)の場合とは異なり、「人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがある」とまでは認められない場合である。
土壌の特定有害物質による汚染の除去により、指定事由がなくなったときは、都道府県知事が解除する。

土壌汚染の搬出規制
16条~28条において、土壌汚染の搬出規制が定められている。
すなわち、土壌汚染の搬出時の届出(16条)、運搬基準(17条)、汚染土壌処理業者に対する汚染土壌の委託義務(18条)、管理票(20条)、及び汚染土壌処理業者への規制(22条~28条)などが定められている。

以上

「複製権」とは、何か?

複製権とは、その著作物を複製する権利のことです。著作権法21条は、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と定めています。
複製権は、著作権を構成する支分権の一つです。

「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」を言うと定義されています(著作権法2条1項15号)。
「有形的に再製すること」ですから、無形的に再製する場合は、複製権には含まれません。無形的な再製は、他の著作権である上映権・演奏権等々が問題となります。

※ 「脚本その他これに類する演劇用の著作物」については、「当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること」を含むとされています。また、「建築の著作物」については、「建築に関する図面に従って建築物を完成すること」を含むとされています。(著作権法2条1項15号)

複製権は、複製権を有する者が著作物を複製できることに意味があるというよりも、複製権を有しない者が著作物を複製する行為を禁止できることに意味があります。著作者と言えども、複製権を他人の譲渡してしまうと、複製権を失ってしまいます。著作者が、自分にも複製権を残したい場合には、他人に利用許諾を行うこととなります(利用許諾につき著作権法63条)。要は、著作者と当該他人とが、契約で取りきめることとなります。

複製権者は、複製権を侵害する者に対し、差止(著作権法112条)や損害賠償請求(民法709条の不法行為等)等を行うことが可能となります。刑事罰の対象ともなり得ます(著作権法119条)。

ある具体的行為が、複製権の侵害に該当するか否か(非侵害)は、規範的に解釈されます。物理的に有形的な再製を行っても、規範的な観点から、複製権の侵害には該当しない(非侵害)と判断されることがあり得ます。
(侵害と非侵害については、また別の機会があれば述べます。)

※ 著作権法の解釈は、規範的に解釈すべきところが多くあります。なので、著作権法の文言を、国語的な意味どおりに理解しようとしても、立ち行かなくなってしまいます。これが著作権法の理解を難しくしているところであり、分かってくると面白いところでもあります。もっとも、規範的解釈は、著作権法に特有というものでもなく、法分野全般に言えることではあります。

「著作物」とは、何か?

「著作物」の定義は、著作権法2条1項1号に定めがあります。
すなわち、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」とされています。

つまり、ある表現物が「著作物」であると認められるためには、次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。

  • 「思想又は感情を創作的に表現したもの」
  • 「文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するもの」

これら2つの要件を満たす表現物であれば、著作物として認められます。対象となり得る表現物は、かなり広いことになります。
しかし、どちらかの要件が一つでも欠ければ、「著作物」とは認められません。表現物であっても、著作物として認めら得るものは限られることになります。表現物であるからと言って、必ずしも「著作物」として認められるということではありません。

著作権法10条には、著作物の例示が定められています。しかし、例示であり、著作物がこれら例示列挙に限定されるものではありません。また、ここに例示されているもの、例えば「写真」であっても、著作権法2条1項1号の要件を満たす「写真」でなければ、「写真の著作物」とは認められません。「著作物」は、広いようで、限定されているので、注意が必要です。

ある表現物が著作物に該当するかどうかの判断は、著作権法2条1項1号等の文言のみから結論が導かれるものではなく、規範的な判断が必要になるので、結構難しい場合があります。著作権法の保護に値する表現物が「著作物」として認められるのですが、保護に値するかどうかは価値判断であり、価値判断であれば論者によって異なりうるのですが、かと言って論者ごとに勝手に判断をしてよいということではなく、過去の判例や学説等に照らし、規範的に判断する必要があるのです。それが結構難しくて、著作権法の専門家であっても、断定的な判断ができなかったり、専門家によって意見が異なることもあります。

典型的な著作物や、よく論点として取り上げられるような表現物の事案であれば、多くの教科書に説明がなされていることも多く、迷わずに済むかも知れません。しかし、非典型的な著作物で、論点とされることが少ない事案では、どの教科書にも、たいてい書かれていません。表現物の範囲が広いところ、教科書等で論じられているのは、ごく一部に過ぎません。

ある表現物が、「著作物」であるかどうかを判断したい場合、次のように検討するのがよいと思います。
(1)
まず、その表現物が、教科書や実務において、典型的に「著作物」として扱われているものかどうかを確かめます。
(2)
典型的な「著作物」でない場合、著作権法2条1項1号の要件を満たす表現物であるかどうか、教科書や過去の判例、実務における一般的な扱いを参考にしながら検討をするほかありません。
(3)
著作物に該当しそうだけれど確実でない場合、あるいは著作物に該当しないと判断される場合には、商標法や不正競争防止法等の他の法令や契約内容に定めることにより保護を受けることができないかどうかを検討することなります。

「著作権」とは、何か?

著作権とは、何か?
著作権の定義は、著作権法17条1項にあります。

著作権法17条1項は、次の様々な権利を、「著作権」としています。

  •  21条   複製権
  •  22条   上演権及び演奏権
  •  22条の2 上映権
  •  23条   公衆送信権等
  •  24条   口述権
  •  25条   展示権
  •  26条   頒布権
  •  26条2  譲渡権
  •  26条の3 貸与権
  •  27条   翻訳権、翻案権等
  •  28条   二次的著作権の利用に関する原著作者の権利

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これら個々の権利の内容は、様々です。
これらひとつひとつは、著作権の教科書では、
「支分権」などと呼ばれたりしています。
これら支分権が、権利の束となって、著作権という基本的な権利を構成しています。
(いわば、それぞれの支分権が「鍵」で、著作権がこれらたくさんの「鍵の束」です。)

もっと端的に、一文で簡潔に「著作権」の定義が示されてくれれば、
すっきりと理解をしやすいのですが、
著作権法は、簡潔な定義付けをしてくれていません。

著作権法の教科書を手に取ってみても、必ずしも著作権の包括的な定義が書かれていません。
簡潔に定義らしいものを掲載している教科書もありますが、
よく読むと、著作権という権利の性質について、
おおまかな傾向や特徴を述べているに過ぎなかったりするので、
定義と言えるのか微妙だったりします。

結局のところ、著作権を包括的に定義づけることは難しく、
著作権とは何かについても、簡単に捉えることはできないようです。
著作権全体について何か言及しようとしても、
全体的な傾向とか特徴とか(例えば、よく言われるように「排他性」とか。)を言い得る程度に過ぎないようです。

実際の場面で、
著作権が問題となった場合には、
そこで問題となる「支分権」が何かを考えて、
その支分権の具体的内容について検討した方がよさそうです。
具体的な支分権の内容を論ぜずに、
漠然と「著作権」という基本的権利を模索していていても、捉え所がありません。

そもそも問題となっている表現物が「著作物」に該当するのかどうかを、先に確かめる必要があります。

なお、参考文献として、中山信弘『著作権法〔第2版〕』239頁〜240頁。