法人が破産すると、取締役や理事の地位はどうなるのか?

概略

株式会社の取締役や、一般社団法人の理事は、これらの法人が裁判所により破産開始決定を受けることにより、これら法人との委任契約が終了し、取締役や理事ではなくなる。
破産開始に伴い、破産管財人が就任し、これら法人の財産の管理処分権は、破産管財人に専属することとなる。つまり、取締役や理事であった者は、管理処分権を失い、会社の財産を処分する権限はない。
破産開始決定は、法人の解散事由ではあるが、清算手続は開始しない。(ただし、破産管財人が破産財団から放棄した財産について処分が必要となった場合には、清算手続きにより処分が進められることがある。)
なお、取締役や理事であった者は、破産手続開始によりその地位を終了することとなるが、破産手続において、破産管財人等に対し説明義務等を負担するものであるから、取締役や理事であったことの責任や役割を直ちに免れるというものではない。法的にも道義的にも、破産手続等に協力する必要がある。

民法の規定による委任契約の終了

民法653条は、「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。」を委任契約の終了事由として挙げている。
一般的に、株式会社と取締役の関係、一般社団法人と理事との関係、及び学校法人と理事と関係は、いずれも委任契約であると解されている。
したがって、これらの法人が破産したときには、上記民法653条により、委任契約は終了するので、取締役や理事ではなくなる。

法人財産に対する管理処分権限を失う

株式会社、一般社団法人、及び学校法人などの破産手続開始決定の際に、裁判所は、破産管財人を選任する(破産法31条1項)。裁判所が破産管財人を選任しないで破産手続開始決定を行う同時破産手続廃止という手続もあるが(破産法216条)、この同時破産手続廃止は個人の場合に用いられることが多く、法人の場合に用いられるのは極めて例外的である。
破産管財人が選任されると、破産管財人が法人財産につき管理処分権を専属して有する(破産法78条1項)したがって、従前の取締役や理事はこれら財産の管理処分権を失う。

破産により法人は解散となる

株式会社、一般社団法人、学校法人は、破産手続開始決定を受けると、解散となる(会社法471条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律202条、私立学校法50条)。解散しても、法人格は、破産手続が終了するまで存続し、それまでは消滅しない(破産法35条)。

株式会社や一般社団法人が破産した場合、清算手続きが開始されるのが原則であるが、破産の場合は例外であり、清算が開始しない(会社法475条、一般社団法人法206条)。
私立学校法の条文は、これら会社法等の規定と比べると、破産により清算は開始しないことが明確に書かれていない。しかし、破産管財人が選任されている破産手続において清算手続を行う必要がないことは株式会社と同様である。また、私立学校法50条の4において破産の場合には理事が清算人に就任しないと定められている。これらのことから、学校法人も破産より清算は開始しないと解されると思う。
なお、破産手続終了後などに、破産管財人が財団から放棄した財産について処分が必要となった場合には、そのために清算人の選任が必要となることがある。この場合、従前の取締役や理事が当然に清算人に選任されるというものではなく、裁判所に清算人の選任を申し立てて、清算人を選任してもらう。費用もかかる。

破産手続開始決定後の取締役や理事の役割

取締役や理事が、破産手続開始決定により委任契約が終了し、それらの地位を失うとしても、その役割を直ちに失うというものではない。
破産法40条は、破産者、破産者の代理人、破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人、前号に掲げる者に準ずる者、破産者の従業者の破産管財人に対する説明義務を定めている。過去にこれらの者であった者も、説明義務を負担している(破産法40条2項)。
したがって、取締役や理事が、破産によりその地位を失ったとしても、破産管財人に対する説明義務を負担しているなどの点において、破産手続に協力する義務がある。
法的にも道義的にも、破産手続に協力する必要がある。

以 上