「複製権」とは、何か?

複製権とは、その著作物を複製する権利のことです。著作権法21条は、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と定めています。
複製権は、著作権を構成する支分権の一つです。

「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」を言うと定義されています(著作権法2条1項15号)。
「有形的に再製すること」ですから、無形的に再製する場合は、複製権には含まれません。無形的な再製は、他の著作権である上映権・演奏権等々が問題となります。

※ 「脚本その他これに類する演劇用の著作物」については、「当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること」を含むとされています。また、「建築の著作物」については、「建築に関する図面に従って建築物を完成すること」を含むとされています。(著作権法2条1項15号)

複製権は、複製権を有する者が著作物を複製できることに意味があるというよりも、複製権を有しない者が著作物を複製する行為を禁止できることに意味があります。著作者と言えども、複製権を他人の譲渡してしまうと、複製権を失ってしまいます。著作者が、自分にも複製権を残したい場合には、他人に利用許諾を行うこととなります(利用許諾につき著作権法63条)。要は、著作者と当該他人とが、契約で取りきめることとなります。

複製権者は、複製権を侵害する者に対し、差止(著作権法112条)や損害賠償請求(民法709条の不法行為等)等を行うことが可能となります。刑事罰の対象ともなり得ます(著作権法119条)。

ある具体的行為が、複製権の侵害に該当するか否か(非侵害)は、規範的に解釈されます。物理的に有形的な再製を行っても、規範的な観点から、複製権の侵害には該当しない(非侵害)と判断されることがあり得ます。
(侵害と非侵害については、また別の機会があれば述べます。)

※ 著作権法の解釈は、規範的に解釈すべきところが多くあります。なので、著作権法の文言を、国語的な意味どおりに理解しようとしても、立ち行かなくなってしまいます。これが著作権法の理解を難しくしているところであり、分かってくると面白いところでもあります。もっとも、規範的解釈は、著作権法に特有というものでもなく、法分野全般に言えることではあります。

「著作物」とは、何か?

「著作物」の定義は、著作権法2条1項1号に定めがあります。
すなわち、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」とされています。

つまり、ある表現物が「著作物」であると認められるためには、次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。

  • 「思想又は感情を創作的に表現したもの」
  • 「文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するもの」

これら2つの要件を満たす表現物であれば、著作物として認められます。対象となり得る表現物は、かなり広いことになります。
しかし、どちらかの要件が一つでも欠ければ、「著作物」とは認められません。表現物であっても、著作物として認めら得るものは限られることになります。表現物であるからと言って、必ずしも「著作物」として認められるということではありません。

著作権法10条には、著作物の例示が定められています。しかし、例示であり、著作物がこれら例示列挙に限定されるものではありません。また、ここに例示されているもの、例えば「写真」であっても、著作権法2条1項1号の要件を満たす「写真」でなければ、「写真の著作物」とは認められません。「著作物」は、広いようで、限定されているので、注意が必要です。

ある表現物が著作物に該当するかどうかの判断は、著作権法2条1項1号等の文言のみから結論が導かれるものではなく、規範的な判断が必要になるので、結構難しい場合があります。著作権法の保護に値する表現物が「著作物」として認められるのですが、保護に値するかどうかは価値判断であり、価値判断であれば論者によって異なりうるのですが、かと言って論者ごとに勝手に判断をしてよいということではなく、過去の判例や学説等に照らし、規範的に判断する必要があるのです。それが結構難しくて、著作権法の専門家であっても、断定的な判断ができなかったり、専門家によって意見が異なることもあります。

典型的な著作物や、よく論点として取り上げられるような表現物の事案であれば、多くの教科書に説明がなされていることも多く、迷わずに済むかも知れません。しかし、非典型的な著作物で、論点とされることが少ない事案では、どの教科書にも、たいてい書かれていません。表現物の範囲が広いところ、教科書等で論じられているのは、ごく一部に過ぎません。

ある表現物が、「著作物」であるかどうかを判断したい場合、次のように検討するのがよいと思います。
(1)
まず、その表現物が、教科書や実務において、典型的に「著作物」として扱われているものかどうかを確かめます。
(2)
典型的な「著作物」でない場合、著作権法2条1項1号の要件を満たす表現物であるかどうか、教科書や過去の判例、実務における一般的な扱いを参考にしながら検討をするほかありません。
(3)
著作物に該当しそうだけれど確実でない場合、あるいは著作物に該当しないと判断される場合には、商標法や不正競争防止法等の他の法令や契約内容に定めることにより保護を受けることができないかどうかを検討することなります。

「著作権」とは、何か?

著作権とは、何か?
著作権の定義は、著作権法17条1項にあります。

著作権法17条1項は、次の様々な権利を、「著作権」としています。

  •  21条   複製権
  •  22条   上演権及び演奏権
  •  22条の2 上映権
  •  23条   公衆送信権等
  •  24条   口述権
  •  25条   展示権
  •  26条   頒布権
  •  26条2  譲渡権
  •  26条の3 貸与権
  •  27条   翻訳権、翻案権等
  •  28条   二次的著作権の利用に関する原著作者の権利

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これら個々の権利の内容は、様々です。
これらひとつひとつは、著作権の教科書では、
「支分権」などと呼ばれたりしています。
これら支分権が、権利の束となって、著作権という基本的な権利を構成しています。
(いわば、それぞれの支分権が「鍵」で、著作権がこれらたくさんの「鍵の束」です。)

もっと端的に、一文で簡潔に「著作権」の定義が示されてくれれば、
すっきりと理解をしやすいのですが、
著作権法は、簡潔な定義付けをしてくれていません。

著作権法の教科書を手に取ってみても、必ずしも著作権の包括的な定義が書かれていません。
簡潔に定義らしいものを掲載している教科書もありますが、
よく読むと、著作権という権利の性質について、
おおまかな傾向や特徴を述べているに過ぎなかったりするので、
定義と言えるのか微妙だったりします。

結局のところ、著作権を包括的に定義づけることは難しく、
著作権とは何かについても、簡単に捉えることはできないようです。
著作権全体について何か言及しようとしても、
全体的な傾向とか特徴とか(例えば、よく言われるように「排他性」とか。)を言い得る程度に過ぎないようです。

実際の場面で、
著作権が問題となった場合には、
そこで問題となる「支分権」が何かを考えて、
その支分権の具体的内容について検討した方がよさそうです。
具体的な支分権の内容を論ぜずに、
漠然と「著作権」という基本的権利を模索していていても、捉え所がありません。

そもそも問題となっている表現物が「著作物」に該当するのかどうかを、先に確かめる必要があります。

なお、参考文献として、中山信弘『著作権法〔第2版〕』239頁〜240頁。